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Not The Last Samurai 

 2003年に公開されたトム・クルーズ主演映画「ラスト サムライ」では明治維新に抗う文字通りラストサムライの勝元盛次役を渡辺謙が演じ、全米と日本で大ヒットしました。

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(2012/12/19)
トム・クルーズ、渡辺謙 他

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 これが契機となったのかはわかりませんが、武道家、武術家など、ラストサムライを冠してメディアに登場する姿を時折見かけます。
 ご自身が名乗られているか、はたまたマスメディアが付したものなのかわかりません。
 ですが武家社会は明治維新によって途絶しましたから、侍的精神という程の意味合いでなければおかしな話です。
 そして往時の武士が日々修練に励みました武術は、現代でも古流武術、古武道などと称されまして伝えられ、修業されております。
 天心流兵法もその一つの流儀として三百八十余年の命脈をかろうじて繋いで参りました。

 ですから侍の精神性は決して途絶しておりませんし、諸流に勇士がある限り、決してラストサムライとはなりません。
 「Not The Last Samurai」です。
 まあ英語文法的に正しいのかちょっとわかりませんが、古流武術がその伝承を確かに伝えている限りは、最後の侍などとは言わせません。

 ドン・キホーテ的な精神を以て、決して現代において直接的に発揮される事が無い技藝を学び深く追求し、またその土台となる武家社会の故実、文化そのものを学び、そして味わう事で、侍の精神を千代に八千代に伝える事を使命としております。

 とここで書いた所で「ラストサムライ」というのは実にキャッチーな言葉ですから、遣われていく事でしょうし、それを止める権利など当流には御座いません。
 ただ日本のみならず、今や世界各国でも日本の古流武術を学ばれている方がたくさんおられます。
 (天心流は海外には支部がありませんし、日本でもそれほど門人数は多くありませんが)
 古を紡ぎ次代に繋げる勇士が存在する事を言明するという趣旨の記事です。

 ですがこれが無価値な骨董品として、顧みられる事がなくなれば、本当にラストサムライともなりかねません。
 事実、そのようにして明治維新、そして度重なる戦争とその後の経済発展の中で、多くの流儀は失伝していきました。

 武家社会から四民平等を経て、今の法の下の平等の社会の中では、誰もが刀を帯びて歩けば捕まりますが、同時に誰もが稽古においてはこれを帯び、学ぶ事が許されております。
 天心流に限らず、是非とも武家世界の扉を叩いて頂きたいと思います。
 それが世界に誇るべき生きた文化遺産伝承の礎となるのです。

  【鍬海 政雲】